過払い金|貸金業者を悪意の受益者として提訴


本件は,貸金業を営む被控訴人(一審被告)と消費貸借取引を継続していた控訴人(一審原告)が,利息制限法所定の制限利率を超過する利息の弁済により過払い金が生じたところ,被控訴人は悪意の受益者であるとして,被控訴人に対し,民法704条の不当利得返還請求権に基づき,過払い金38万2968円及び平成16年12月31日までの商事法定利率年6分の割合による利息2万1859円の合計40万4827円及びそのうち上記過払い金38万2968円に対する平成17年1月1日から支払済みまで同割合による利息の支払を求めた事案である。
原判決は,被控訴人が悪意の受益者であるとして,民法704条の不当利得返還請求を認めたが,その利息の利率は民法所定の年5分の割合によるとして,控訴人の上記請求を一部棄却したため,控訴人は,これを不服として控訴した。

1 争いのない事実

(1) 被控訴人は,貸金業を業とする株式会社である。
(2) 控訴人は,被控訴人から,利息制限法所定の制限利率を超える利息を支払うとの約定で,別紙引き直し計算書の「年月日」欄及び「借入金額」欄記載のとおり金員を借入れ,同計算書の「年月日」欄及び「弁済額」欄記載のとおり弁済した。

2 争点

(1) 貸金業の規制等に関する法律43条のみなし弁済の規定の適用の有無
(2) 被告は悪意の受益者か否か。
(3) 民法704条の「利息」の利率

(控訴人の主張)

ア 不当利得返還の制度は,受益者と損失者の実質的公平という一般的正義の実現を目的とするものであり,その実質的事情に応じて民法704条の「利息」も認定されるべきであるところ,同条は悪意という受益者の主観的悪性事情の存在を前提とするものであるから,損失者の損害の有無に関係なく,受益者の通常得ている利息をもって同条の「利息」と解すべきであり,民法703条の適用場面とは異なり利得と損失との間の因果関係は不要であると解すべきである。
民法190条は,占有すべき者がその果実を実際に収受し得たか否か,すなわち,果実に関する損害の有無に関係なく果実の返還・代価償還をすべきとするものであり,不法行為の特則というべきところ,民法704条についても,同様に不法行為の特則と解すべきであり,そのように解しなければ,民法190条との整合性を欠くことになる。
イ 東京高等裁判所平成13年2月18日判決(判例時報1742号96頁)は,「不当利得返還請求権の利息請求権の利率につき,民法所定の年5分によるべきか,商事法定利率の年6分によるべきかは,不当利得を発生させる原因となった行為が商行為であるか否かによって決まるものではない。
不当利得返還請求権は,利得者が法律上の原因なく有している利得を損失者に返還させる民法上の請求権であるから,その利息は,原則として,民法所定の年5分によるべきである。
しかし,利得者が商人であり,利得物を営業のために利用し収益を上げていると解される場合には,利得者には商事法定利率の年6分の割合による運用益が生じたものと考えるのが相当である。そこで,このような場合には,例外的に年6分の利率によるべきである。」と判示しており,多くの裁判例が同旨の判断をしている。
ウ 本件において,受益者である被控訴人は商人(貸金業者)であり,控訴人からの受領金を営業として貸し付けて,商事法定利率にとどまらず,利息制限法の制限利率をも上回る利率による利息を取得しているものであるから,被控訴人には,少なくとも商事法定利率年6分による運用利益が生じているといえる。したがって,本件の過払い金に付すべき「利息」の利率は年6分とすべきである。
エ 不当利得返還の制度は,両当事者の公平を図るという一般的な正義を目的とするものであるから,その原因関係が商行為によるものであっても,その時効消滅の期間は一般規定である民法167条1項によって10年となる。
過払い金返還請求権の消滅時効が10年であり民事上の一般債権であることをもって,本件の過払い金に付すべき利息を年5分とする形式的解釈は明白な誤りである。
商取引に関する不当利得返還請求権の消滅時効は,迅速処理の要請からすれば本来5年と解釈されるべきであるが,無効あるいは取消等の原因が社会法的性格を帯びる場面においては,その解釈は変更しなければならない。
最高裁昭和55年1月24日第一小法廷判決(民集34巻1号61頁)が過払い金返還請求権の消滅時効を10年とする判断をしたのは,経済的弱者保護の見地に立った利息制限法の社会法的精神をもって,対等な当事者間でのみ妥当する迅速処理の要請という精神を凌駕しなければ,法の正義が実現できないことを考慮したうえでのものである。

(被控訴人の主張)

控訴人の主張はいずれも争う。
ア 過払い金返還請求権は,商行為たる貸付取引を原因として発生する権利ではなく,民事法である利息制限法を根拠法として発生する権利である。
イ また,商人であれば必ず年6分の資金運用益を上げることができるとは限らない。
ウ さらに,不当利得返還請求権は,民事法を根拠とするものであり,商人性の有無を考慮する余地はない。
エ 過払い金返還請求権の消滅時効については,最高裁判所の上記判決により,10年間であることが確定しており,法の一義的解釈の原則によれば,民法704条の「利息」の利率を商事法定利率年6分と解する余地はない。

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当裁判所の判断

1 争点(1),(2)について

原判決「事実及び理由」の第3の1,2に記載のとおりであるから,これを引用する。

2 争点(3)について

控訴人は,本件において,過払い金返還債務につき被控訴人が支払うべき民法704条の「利息」については商事法定利率によるべきである旨主張するので検討する。
商法514条の適用又は類推適用される債務は,商行為に属する法律行為から生じたもの又はこれに準ずるものでなければならないところ,金銭消費貸借契約において利息制限法所定の制限をこえて支払われた利息・損害金についての不当利得返還債務(以下「過払い金返還債務」という。)は,法律の規定によって発生する債務であって,商行為から生じたものではない。
しかしながら,商人が営業のために行った金銭消費貸借契約について生じた過払い金返還債務は,その利息の約定が利息制限法所定の利率を超える部分につき無効であるため,同契約上の義務の履行としてされた給付につき生じたものである。そして,商事契約の解除による原状回復義務は商法514条の商事債務たる性質を有するものと解されるところ,この原状回復義務と上記過払い金返還債務とを比較すると,商事契約上の義務の履行としてされた財貨の移動につき,前者はその後の契約解除によってそれが法律上の原因を欠くこととなった場合であり,後者は契約が一部無効であったことによってそれが法律上の原因を欠くこととなった場合であるから,両者は商事契約の履行によって生じた関係を清算するものである点において何ら異なるところがない。
ところで,商法514条が商行為により生じた債務について法定利率を年6分としたのは,商人は金銭を非商人よりも有利に利用することができるから,債務者が商人である場合には非商人よりも高い率の利息の支払が期待されるとともに,商人は営利を目的として活動するものであるから,債権者が商人の場合には非商人よりも高率の利息の支払を要求するのが当然であることを理由とするものと解される。
そして,商人は,営業のために行った金銭消費貸借契約から利得した過払い金を営業に使用して非商人よりも有利に利用したものということができるから,過払い金返還債務の債権者は,債務者たる商人に対し非商人よりも高い率の利息の支払を期待することができるというべきである。
なお,債権者が非商人である場合にも,商行為により生じた債務又はこれに準ずる債務については商法514条が適用されるものであり,非商人である債権者には高い率の損失が発生しないであろうことは,同条の適用を排除する理由とはならない。
そうであるなら,商人が営業のために行った金銭消費貸借契約から生じた過払い金返還債務は,商事契約の履行によって生じた関係を清算するものである点において,商事債務である商事契約解除による原状回復義務と経済的機能が共通であり,かつ,債権者が債務者に対し非商人よりも高い率の利息の支払を期待しうることからすれば,同過払い金返還債務については,商行為から生じたものに準ずるものとして,商法514条が類推適用されるものと解するのが相当である。
被控訴人は,商行為である金銭消費貸借契約に関して生じた過払い金返還債務の消滅時効期間につき,最高裁判所の前記判例は,商行為から生じたもの及びこれに準ずるもののいずれにも該当しないとするものであるから,商法514条の適用においても同様に解すべきである旨主張する。
しかしながら,過払い金返還債務については,たとえそれが商行為である金銭消費貸借契約に関して生じたものであっても,その清算関係を商事取引関係と同様に迅速に解決すべきとする要請がひとしく妥当するものということはできない。
そうすると,商事取引関係の迅速な解決のため短期消滅時効を定めた商法522条を類推適用すべき場合にはあたらないから,過払い金返還債務は,同条の適用に関しては商行為から生じたものに準ずる債務には該当しないと解すべきである。
これに対し,法定利率に関する商法514条の適用ないし類推適用に関しては,上記のとおり,商行為である金銭消費貸借契約に関して生じた過払い金返還債務の債権者は,商人である債務者に対し非商人よりも高い率の利息の支払を期待することができるというべきであるから,商行為から生じたものに準ずる債務に該当すると解するのが相当であって,この結論の相違は,両条の立法趣旨の相違に由来するものである。
これを本件についてみるに,被控訴人は貸金業を業とする株式会社であり,その営業として控訴人との間で金銭消費貸借取引をしたものであるから,本件過払い金返還債務につては,商法514条が類推適用されるものというべきである。

3 結論

以上によれば,控訴人の請求は理由があり,原判決が,そのうち不当利得金の内金30円及び未払利息の内金2903円の合計2933円並びに上記30円に対する平成16年10月22日から支払済みまで年6分の割合による利息並びに不当利得金38万2938円に対する同日から支払済みまで年1分の割合による利息の支払を求める部分について,請求を棄却したのは相当ではないから,これを取り消し,同部分につき控訴人の請求を認容することとし,主文のとおり判決する。

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手形貸付の過払い金の判例
被告
職員
出資

債務超過状態

原告は、上記の5%や10%の引当率の適用に関し、そうしなければA銀行が債務超過状態に陥り、B銀行との特定合併を実現することができなくなることを危惧したためになされた不正な処理であると主張し、このことが貸倒引当金の過少計上をうかがわせると主張する。
しかし、仮にこのような目的ないし主観状態であることが認められるとしても、上記において認定説示したとおり、平成10年3月期における公正な会計基準に照らして適切な範囲内の方式を採用して貸倒引当金を算定し、これを貸借対照表上の項目に記載したものと認められれば、目的ないし主観のいかんにかかわらずその記載が虚偽であるとは認められない。
そして、本件においては、上記のとおり客観的に判断して公正な会計慣行に照らして適切な範囲内の会計方式を採用したものと認められる以上、上記の目的ないし主観状態を以てそうでないと認めることはできないのであって、原告のこの主張は採用できないというべきである。
原告のその余の主張に対する判断ア原告は、上記のほか、預金保険機構が、平成10年6月、A銀行とB銀行が特定合併するのに際して、株式会社整理回収銀行が譲渡を受ける債権の対象等についてA銀行と協議した際、A銀行に対し、引当金不足等を指摘したことを挙げ、このことが平成10年3月期における貸倒引当金が不足していたことのあらわれであると主張する。
しかし、A銀行の引当金計上は当該債務者との取引継続を前提としてされているところ、預金保険機構の担当者自身も、継続的な取引を前提とするか否かで引当金に対する見方が異なり、株式会社整理回収銀行は取引を継続しない前提で債権を譲り受けるものであることからすれば引当金を上積みすべきであるとの趣旨で上記指摘をしたことを認めているから(甲45〔10、11〕)、上記指摘は、A銀行やB銀行の平成10年3月期における貸倒引当金計上の適否を判断する上で参考にはならないものというほかなく、原告の主張は採用できない。